2017年衆議院選挙で希望の党が公約にあげたことにより争点の1つになりそうな、内部留保について調べてみました。少しでも参考になれば幸いです。

 

■内部留保とは?

まず企業の内部留保について説明します。

 

企業は、1年間の決算を終えたのち、法人税や消費税の支払い、かを行います。

各種の税金を支払い後、残ったお金が企業が自由に使えるお金であれ内部留保(利益剰余金)と呼ばれます。

 

内部留保の主な使い道は、2つあります。

 

① 震災や不況、あらゆるリスクを想定して「貯蓄」する。

この貯蓄により、従業員への給与支払い、仕入れ元への給与支払い、銀行からの借り入れ返済等、滞ることなく企業を存続させることができます。

 

② 投資をする。

将来への設備投資、人材投資、

設備投資、人材投資、株主還元、貯蓄、何に回しても企業(株主)の自由です。

 

 

■内部留保は現金とは限らない?

内部留保は一般的に利益剰余金の文脈で語られていますが、実際に現預金として留保されている金額は内部留保のうち約半分です。

 

 

■二重課税にならないの?

そもそも、各種税金を支払った後のお金は企業(株主)が自由に使えるお金です。

一度税金を支払ったあとに再度課税をするのはおかしい、と政府や経済界から反発が起きています。ただし、麻生財務相、および政府はたびたび内部留保はためこまず賃金上昇や設備投資に回すべき、というメッセージは発信しており、内部留保を経済活性により活用すべきという方向性は、自民党、希望の党ともに一致しているように思います。

 

参考)

希望の党公約の内部留保課税は「二重課税」 麻生太郎財務相

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171006-00000543-san-bus_all

 

希望公約 内部留保課税に相次ぐ批判 経産相「会計学上正しくない」 日商会頭「二重課税おかしい」

http://www.sankei.com/politics/news/171007/plt1710070036-n1.html

 

【全文2/2】希望の党・小池氏、ベーシック・インカム導入検討の根拠は「AIの存在」 政策会見で明かす

http://logmi.jp/239360

—(以下引用)—

内部留保についてでございますけれども、内部留保課税というのはですね、これまでもよく俎上にのぼってまいりました。ただ、いつもそこで課題になるのは、「二重課税ではないか?」という議論でございます。私はこれをあらためて内部留保課税、まあ、300兆円とも400兆円とも言われておりますけれども、アメリカや韓国、台湾などでもすでに行われているものでございます。

「内部留保課税を日本がやると、また企業が外に逃げてしまうのではないか?」という議論がございますけれども、このようにですね、海外でも行っているということと、日本でもすでに同族会社に対しては、通常の法人税に加えて内部留保課税が行われているということで、問題にはなっておりません。

また、「受取配当に関します所得税との二重課税」とのご批判ということであるならば、法人税と所得税との間にあるそもそもの問題ではないか。それからよくご指摘があるのは、「安定財源になりえないのではないか?」という議論であります、内部留保課税というのは。

これはですね、調べてみますと、資本金1億円以上の企業の利益剰余金というのは、過去40年ほどさかのぼりましても、まあ、若干リーマンショック……、いや、大震災の時に下げている例がございますけれども、内部留保自体は景気によって上がったり下がったりするものではないということが、これらのチェックでわかるわけでございます。

内部留保課税が実施された後に、課税を避けるためにそれを取り崩す、と。そして、それを設備投資に回すであるとか、それから企業内保育園をつくるであるとか、そういったことに、より有効に活用されるというのは、まさしく内部留保課税の効果というものであって。

これらがですね、実際に設備投資に回る、株の配当に回るということは、これまで貯めに貯められてきたお金が流動的に動くという、そのきっかけになると、私どもは考えているところでございます。それをキャピタルゲイン課税と呼ぶのか、それとも税制によってインセンティブをつけるのかというのは、工夫のしどころではないかと考えております。補足は後藤のほうからさせていただきます。

後藤:「2019年の消費税10パーセント引き上げをしないのであれば、そのタイミングで?」というご質問かと思いますが、この内部留保課税をどのタイミングでするのかというのは、今の段階で決めているわけではございませんが、やはり財政との関係というのは当然考えながら、検討を急いでやらなきゃいけないと思いますし。

今、代表から申し上げたように、これ、経済効果が非常に大きく出るものではないかというふうに思いますので、景気の状況も見ながらですね、景気対策の意味合いもあるだろうということからも、早い検討が必要ではないかと思っております。

—(引用終了)—

 

■二重課税は本当に問題か?

希望の党記者会見内で語られている通り、内部留保への課税が各国でも行われているという前提が正しい場合、内部留保への課税が間違っている、とは言い切れないのではないかと思います。

 

■内部留保金課税メリット

・消費税は直接、国民が消費をする際に直接負担になり消費冷え込みは明らかであり、

それを回避する代替財源の1つになりうる。

・内部留保課税を避けるため企業が設備投資や従業員、株主への還元を増やす選択をする材料になる

 

■内部留保金課税デメリット

・内部留保金課税で企業への課税が厳しくなることにより税制メリットのある国へ逃げないか

・二重課税に法的な問題はあるか

 

■内部留保金以外の代替案

・法人税率を一律上げる

・法人税にも累進課税制度を導入しより利益額の大きい企業の法人税額支払いを増やす

 

(どちらも、法人税として企業に支払う前に設備投資や人材投資に充てようとするインセンティブになる)

 

 

まだ結論を導くことはできませんが、税制度を議論するにあたっては多角的な側面からの検討が重要になります。各政党内、省庁、政府内での検討資料を、より詳細に公開していき、国民が議論できる材料が増えるとよいと思います。

 

 

 

■各政党

自民党

政策パンフレット2017には記載なし。

 

希望の党

内部留保への課税は消費税増税凍結の代替財源になりうる

 

立憲民主党

記載なし

 

 

■参考

法人留保金課税制度の日米比較

https://www.google.co.jp/search?q=%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%86%85%E9%83%A8%E7%95%99%E4%BF%9D%E8%AA%B2%E7%A8%8E&ei=zfraWfPYMoG-0gT0zYOoBA&start=10&sa=N&biw=1366&bih=675

 

内部留保に課税発言 携帯電話料金軽減問題 政治家には自業自得

大前研一のニュース時評

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20151129/dms1511290830004-n1.htm

 

立憲民主党 結成記者会見 102

http://logmi.jp/series/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%9A-%E7%B5%90%E6%88%90%E8%A8%98%E8%80%85%E4%BC%9A%E8%A6%8B-10%E6%9C%882%E6%97%A5

 

内部留保 -すべて現預金でストックされているという勘違い

http://president.jp/articles/-/11742

 

増え続け377兆円 賃上げ、投資 迫る政府

https://mainichi.jp/articles/20161106/k00/00e/020/165000c

ただ、企業は内部留保をまるごと現金でため込んでいるわけではない。工場建設や海外企業買収などに充てており、内部留保は現金ではなく、工場や株式などに姿を変えた形でも存在する。法人企業統計によると、企業が持つ現金と預金は15年度に約199兆円と内部留保全体の半分強だ。

 

 

【図解・政治】衆院選2017・企業の内部留保と賃上げ動向(201710月)

https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-syugiin20171006j-03-w470

カテゴリー: 税金

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