憲法の目的は、権力者が実行できることを制限することで、国民の権利を守ることにあると思います。ただし、日本国憲法の前文には、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」とあります。つまり、日本国民は、前文に記載されていることに全力を上げて取り組む約束をしているのです。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E5%89%8D%E6%96%87

そもそも、憲法を改正するべきでないという人の主張の根拠は、「権力者(国会議員)が自分の権限を増やすために改正するのでは?」と言いますが、改訂条件は、衆参両院の議員の2/3以上、国民投票で過半数です。そんなに簡単ではないですし、日本国民の過半数が簡単に騙されるとも思いません。我々の意志が反映された改正になると考えられます。そもそも、改正が良くないのであれば、日本国憲法96条の改正条項を改正しなくていけませんね(笑)

積極的改正派は、GHQから押し付けられた憲法であり、日本国民の意思が反映された自主憲法を制定するべきと主張します。GHQから押し付けられたか否かの話は、程度の問題であるので、大切なのは今の憲法に対して、国民が変えたいと思うか否かです。憲法は変わらないものだとして思考停止になることは最悪ですが、なんでもかんでも変える必要はないでしょう。この75年戦争をせずに平和を謳歌できたことに、この憲法が果たした役割は小さくないと思います。

さて、問題になるのは「どの条項」を「どう改正」するかです。感情的な議論ではなく、改正した場合のメリット・デメリットを考える必要があると思います。

9条に自衛隊に関する項目を追加するべきということに関して考えてみましょう。1,2項は残して3項に自衛隊に関する項目を明記する発言しています。それでは、自衛隊を明記することのメリット・デメリットで言われるのは以下のようなことでしょうか。

(メリット)

1.憲法で明記することで、自衛隊の役割を国民の合意の上で明確にできる。

2.自衛官は今まで海外で1発の銃弾も使っていません。憲法で規定されている、武力行使の禁止を守るためです。自分たちを守らない状況にあっても、邦人を守らない状況であっても、憲法に明記されず法律も整わない中、迷いが生じた結果の惨事が考えられます。憲法に明記することで、自衛官が自信をもって任務に臨めるようになります。海外の邦人保護にも積極的に関わることができます。

PKO活動への参加も、自衛隊は装備からして武力組織からは軍隊同様ですし、他国の軍からも軍隊と思われて当たり前です。しかし、できることは後方支援のみ、最近駆けつけ警護もできるようになりましたが、制限があります。非常に難しい立場なのです。そこを明確に行動できるようになります。(ここは法律の話になるかもしれませんが)

3.自衛隊を制限できる。今までの憲法の解釈で色々自衛隊の出来ることを増やしてきました。これがエスカレートすることを懸念した人は多いのではないでしょうか?憲法に明記し、制限も明記することで勝手に解釈されないようになります。

(デメリット)

1.軍隊を持つことで、戦争につながるのではないか、他国の戦争に巻き込まれるのではないか?

2.改正がエスカレートしていくことで、最終的に戦争する国になるのではないか?この75年の平和国家が終わってしまうのではないか。

3.徴兵制度が復活するのでは?国の戦争に国民を導入するのでは?

さて、メリット・デメリットを書きました(他にももちろんあると思います)。皆さん、お気づきかと思いますが、デメリットに記載されていることは、「不安」です。つまり、「自衛隊を明記」するのであれば、この「不安」を払拭できるような国民的な議論を行うことが大切なのではないでしょうか。それがない限り、中途半端な状態での改正には大いに疑問があります。しかし、議論をしないことはもっと疑問があります。

ちなみに、改正しなかった場合は、今のまま自衛隊は何とも微妙な存在で、そのまま、自衛官を海外に派遣することになります。今の憲法解釈を変える形で、戦争に突き進むかもしれません。日本は、75年以上戦争をせず、軍隊を持たずに成功した国として今後の世界の参考にされるかもしれません。改正しなかった場合にどうなるかを考えるのも重要なのではないでしょうか。

今回の衆議院選挙では、「憲法改正に反対」ではなく、「自衛隊の明記に賛成」ではなく、各党や議員が「具体的な話をしているか」、「自衛隊に何をさせようとしているのか」、「自衛隊の何を制限するのか」といった視点で考えてみるとおもしろいのかもしれません。

 

カテゴリー: 憲法

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